「金環(きんかん)日食(にっしょく) 遠征(えんせい)」


 あんなに何度(なんど)も天気(てんき)予報(よほう)を見たことはありません。「くもりや雨の場合(ばあい)は、どうする?」という話は遠征(えんせい)を企画(きかく)したときからありましたが「いやいや、かならず晴れますから」という変(へん)な自信(じしん)がありました。そのため、2日前の夜までは予定(よてい)通(どお)り、高知県(こうちけん)の室戸(むろと)へ行くつもりでした。しかし、高知県の天気予報は悪(わる)くなる一方(いっぽう)。出発(しゅっぱつ)前日(ぜんじつ)5月19日(土)の夜に何人かからご意見(いけん)をいただき、20日(日)朝の天気予報を見て最終(さいしゅう)判断(はんだん)をすることにしました。

 朝5時の最新(さいしん)の予報では、やはり四国(しこく)は南ほど天気が悪そうなので、高松(たかまつ)や徳島(とくしま)方面(ほうめん)を目指(めざ)して、車中泊(しゃちゅうはく)で移動(いどう)するという無謀(むぼう)な遠征を決断(けつだん)しました。

 5月20日(日)20時、鳥取(とっとり)空港(くうこう)に集合(しゅうごう)。光り輝(かがや)く金星(きんせい)を眺(なが)めながら、ぎっしりと乗り込(こ)んだマイクロバスは夜の街(まち)を進んで行きました。深夜(しんや)0時ごろ、瀬戸大橋(せとおおはし)の与島(よしま)サービスエリアで休けい。暗くて瀬戸大橋の雄姿(ゆうし)が見えず、しかも小雨(こさめ)が降(ふ)り始(はじ)めました。でも、子どもたちは元気いっぱい。いろいろなものを買い込んでは食べまくっていました。

 午前(ごぜん)1時に津田(つだ)の松原(まつばら)サービスエリアに到着(とうちゃく)。けっこうな勢(いきお)いで雨が降っています。鳥取大学(だいがく)天文研究会(てんもんけんきゅうかい)のOB(オービー)2人と合流(ごうりゅう)し、天気予報をチェック。南ほど天気が悪そうなので、いざとなれば、すぐ淡路島(あわじしま)へ渡(わた)って北上(ほくじょう)できる鳴門西(なるとにし)パーキングエリアで待機(たいき)することにして、さらに移動(いどう)。午前2時に現地(げんち)入りし、そこで5時すぎまで仮眠(かみん)しました。満席(まんせき)の車中泊はやはり厳(きび)しく、眠(ねむ)れなかった子もあったようです。

 夜が白々(しらじら)と明け始めても、まだ小雨が降っています。しかし、東の低空(ていくう)に晴れ間があり、少し希望(きぼう)が見えてきました。観察(かんさつ)によい場所(ばしょ)を探(さが)して少しウロウロし、鳴門西パーキングの下(くだ)り側(がわ)が良さそうだということで、6時に望遠鏡(ぼうえんきょう)などの機材(きざい)を持って大移動しました。その後、晴れ間が増(ふ)えてきて、日食が見える期待(きたい)が高まりました。あとは太陽(たいよう)が雲(くも)から出てくるのを待つばかり。

鳥大OBのケンゾーくんが、たくさん望遠鏡を
積んでくれました。ありがとう!!
日食にそなえて、準備中 早く雲から太陽が出てこないかなぁ〜
準備はバッチリ あとは太陽が出てくれば うぉ! ついに太陽が出たぁ〜 ほら、あそこに欠けた太陽が!!


 日食が始まる6時16分を過(す)ぎましたが、まだ見えません。今か今かと待っていると6時45分過ぎ、ついに欠(か)けた太陽が現(あらわ)れました! みんなで騒(さわ)ぎながら見たり、写真(しゃしん)を撮(と)ったりしていると、どんどん太陽は欠けていき、7時27分の金環日食の時間が近づきました。この頃(ころ)は変化(へんか)が早く、見る見るあいだに太陽が細(ほそ)くなり、ついに輪(わ)になりました! うす雲があり、太陽メガネを使わなくても輪になった太陽がきれいに見えました。なんだか不思議(ふしぎ)な景色(けしき)でした。

ずいぶんと欠けてきた! もう少し!! ついに金環! 太陽のリングに感激


 見とれているとあっという間に2分40秒間の金環状態(じょうたい)は終(お)わり、また丸(まる)い太陽へとだんだんと戻(もど)り始めました。なんだかすでにさっきの太陽リングが夢(ゆめ)だったような気分(きぶん)になりながらも、日食後半(こうはん)の撮影(さつえい)や観察(かんさつ)を続(つづ)けました。後半は日食を見るよりも遊(あそ)び始める子が多く、「日食、まだ終わらんだか?」などとぜいたくなことを言う子もいましたが(笑)、そうこうしているうちに8時52分となり、ついに日食は終了(しゅうりょう)しました。

金環日食が終わってから、1回目の記念撮影
太陽といっしょにはうまく撮影できなかったので、
金環のときの太陽を合成してみました。(^^;


 みんなで片づけをして、鳴門(なると)のうずしおを船(ふね)から見たり(個人的(こじんてき)には瀬戸内海(せとないかい)と太平洋(たいへいよう)の境目(さかいめ)が一番(いちばん)印象的(いんしょうてき)でした)、淡路島(あわじしま)の「野島(のじま)断層(だんそう)」を見学(けんがく)したりして、鳥取への帰路(きろ)につきました。帰(かえ)りのバスはタフなYAC団員(だんいん)もさすがに爆睡(ばくすい)! ほぼ予定通りの時刻(じこく)に鳥取へ帰りつき、解散(かいさん)しました。

 今朝(けさ)のことなのに、もう2日くらい前のことだったような気になりながら、とても濃(こ)い1日が頭(あたま)の中をまわりました。直前(ちょくぜん)の日程(にってい)変更(へんこう)、車中泊、直前までの雨など、ハードでハラハラの旅(たび)でしたが、金環日食が見られて本当に良かったです。

 遠征しないと見られない天文(てんもん)現象(げんしょう)は当分(とうぶん)ないので、もうこんな無謀(むぼう)な旅はないと思いますが、今回改(あらた)めて団員たちの強(つよ)さを感(かん)じた旅となりました。次に鳥取の近くで金環日食が見られるのは2041年(近畿(きんき)や東海(とうかい)で見られます。ちなみに2035年には富山(とやま)〜茨城(いばらぎ)あたりを通る皆既(かいき)日食があります)。YAC団員たちもお父さん・お母さんになって、自分の子どもといっしょに眺(なが)めることでしょう。じいさんになった私も負(ま)けないように2度目の金環日食を拝(おが)みたいと思います。

日食終了後にみんなで2回目の記念撮影! いや〜金環日食が見えて本当に良かった!!


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